東南アジア遠征を始めてから、キシタアゲハ類の撮影はどの遠征先でも優先順位は高いのですが、会心の作画に成功しておりません。撮影地のポーリン温泉は古くからこのアゲハ類の産地として有名で、この地を訪れたのは、当然、キシタ狙いでもあったからです。
　初日（5/1）、二日目（5/2）の朝方、キシタの舞を目撃しましたが、撮影には至らず半ば諦めていました。しかし、何とか最終日にヒラヒラと独特な飛翔をするキシタを発見した時は胸がドキドキしたのです。
　キシタを飛翔中に同定する能力は管理人はなく、帰国してからやっと、本種と決定しました。普通種のヘレナが低地性だとすると、本種はやや山地性。ボルネオ産♂で比較すると、ヘレナ（ssp. mosyclus）は前翅がほぼ漆黒で後翅外縁に黒い縁取りが明確です。これに対し、本種は前翅脈に沿って、淡黄色の線状紋が発達し、後翅の縁取りが殆どなくほぼ全面が黄金色に輝く見事な色調です。

　飛翔で何とか撮影したこの個体はちょっとスレが目立ち、次回は完品で吸蜜シーンを狙いたいところです。

分布：　マレー半島、スマトラ・ジャワ・ボルネオ島およびそれら周辺の小島。