香港では１、２月を除き、ほぼ通年見られるイナズマチョウとされています。撮影で訪れたランタウ島の寒村に私の背丈ほどの小さいマンゴーの木が植えられています。この木を横目で通り過ぎようとした時、突然、デカい褐色のタテハが突っ込んできました。バタバタ羽音が聞こえるような、すごい飛翔でマンゴーの周辺を飛び回っています。イナズマの♀とわかるまで、時間がかかりませんでした。慌ててカメラを取り出して観察すると、どうやら産卵に訪れたようですが、近くの撮影者が気になるのか、なかなか産卵行動に移行しません。そのうち、少し離れたエノキの葉上に静止し、やっと撮影できました。
　「オジロ」の和名は♂の後翅デザインに因むもの。♀は前翅に白いタスキがかかり同定が楽な種類です。　ボルネオで出会ったイナズマ（E. kanda）♀は「稲妻」の名が泣くほど、緩やかな飛翔でしたが、本種は真に雄大な飛び方で、特に滑空時のスピード感はたまりません。イナズマに「はまる」人が多いのも納得です。ネットを振って逃げられ、悔しい思いをしたゲストの方もいるのではないでしょうか。実は、♂にもこのポイントで出会ったのですが、♀を凌駕する、まるでジェット戦闘機のようなスピードで視界から消え、撮影どころではありませんでした。見送った後に残る爽快感・・・、これもこのタテハの魅力でしょう。